◎本日の聖書箇所【使徒の働き19章23節~31節】(新約聖書p.274下段左側)
19:23 そのころ、この道のことで、大変な騒ぎが起こった。
19:24 デメテリオという名の銀細工人がいて、銀でアルテミス神殿の模型を造り、職人たちにかなりの収入を得させていたが、
19:25 その職人たちや同業の者たちを集めて、こう言ったのである。「皆さん。ご承知のとおり、私たちが繁盛しているのはこの仕事のおかげです。
19:26 ところが、見聞きしているように、あのパウロが、手で造った物は神ではないと言って、エペソだけでなく、アジアのほぼ全域にわたって、大勢の人々を説き伏せ、迷わせてしまいました。
19:27 これでは、私たちの仕事の評判が悪くなる恐れがあるばかりか、偉大な女神アルテミスの神殿も軽んじられ、全アジア、全世界が拝むこの女神のご威光さえも失われそうです。」
19:28 これを聞くと彼らは激しく怒り、「偉大なるかな、エペソ人のアルテミス」と叫び始めた。
19:29 そして町中が大混乱に陥り、人々はパウロの同行者である、マケドニア人ガイオとアリスタルコを捕らえ、一団となって劇場になだれ込んだ。
19:30 パウロはその集まった会衆の中に入って行こうとしたが、弟子たちがそうさせなかった。
19:31 パウロの友人でアジア州の高官であった人たちも、パウロに使いを送り、劇場に入って行かないようにと懇願した。
◎メッセージ【銀細工人デメテリオ】
《パウロは、プリスキラとアキラと共に、午前中は天幕造りの仕事をしながら、午前11時から午後4時までの間、自費でティラノの講堂を借りて、神の言葉を語りました、このことが、二年続いたので、アジア州に住む人々は皆、ユダヤ人もギリシャ人も主の言葉を聞いたのです。そして、主はパウロを通して、み言葉に伴う驚くべき力あるわざを行なわれました。 また、ユダヤ人の祭司長スケワの七人の息子が悪霊に打ち負かされた事を通して、エペソに大きなリバイバルが訪れました。こうして、主イエスの言葉は力強く広まり、益々勢いを増して行きました。その頃のことです。エペソに大きな騒乱が巻き起こったのです。それは、「銀細工人デメテリオ」によるパウロへの抗議でした。しかし、この騒乱の背後にも主が働かれていたと思われます。なぜなら、パウロがエペソを離れる切っ掛けとなったからです。
エペソは、アルテミス信仰の総本山とも言える都市でした。特に、古代七不思議の一つとされているアルテミス神殿は、それは比べ様のない荘厳な建築物であったのです。そこには、多くの参拝者や観光客が訪れていたのです。また、神殿の存在によって巨大な収益を得ていた多くの集団が存在し、ことに銀細工人組合は銀製の神殿模型の上にすえられた女神アルテミスの銀の像を製作し莫大な利益を得ていたのです。福音が使徒パウロによってこのエペソに伝えられた時、当然この偶像産業社会との衝突が起こり、銀細工人デメテリオが同業者たちを扇動して暴動を引き起こしたと言うのです。彼らは、パウロを捕らえようとしましたが、その時パウロは不在であって、代わりにガイオとアリスタルコをティラノの講堂から引きずり出し、劇場に連れて行ったのです。パウロは二人を救い出そうとして劇場に入ろうとしましたが、弟子たちや友人の役人によって引き留められました。
さて、ヨハネの手紙第Ⅲは、長老ヨハネがエペソからガイオに宛てて出したものですが、その中に次のような記事が書かれています。
『デメテリオについては、すべての人たちが、また真理そのものが証ししています。私たちも証しします。私たちの証しが真実であることは、あなたも知っています。』と。聖書は明確にしてはいませんが、かつて銀細工人の頭であったデメテリオと同一人物だと思われます。 この騒動から、かなりの年数を経た後に、彼は主イエスの恵みによって救われたのです。
それだからこそ、ルカはあえてデメテリオの名前を書き記したのです。
かつてのサウロも、主イエスを迫害しました。そして、デメテリオも同じでした。私たちは、主イエスが誰を選ばれているのかは分かりません。しかし、主は私たちの周りに、救われるべき魂を用意しておられます。
恵みによって、先に救われた私たちのするべきことは、何時であっても、世の光として、地の塩として、劇場の非常口の掲示板のように、永遠の命に至る救いの道を、指し示して行くことなのです。》